2014年3月4日火曜日

奈良の旅人エッセイ-32-「奈良の旅人」

「奈良の旅人」

私と奈良との出会いは、転勤(結婚)による引越しでした。22歳まで生れ育った名古屋を就職と殆ど同時に大阪へ転勤となり大阪の社員寮に住んでいました。24歳で結婚、大阪への通勤圏である奈良市の学園前に住居を借り新婚生活を始めました。
結婚してしばらく子供ができる事無く、友達もいない家内は、働きに行きたいと近鉄奈良駅の近くに勤めに出ました。職場でいろいろな情報(春日大社万灯篭、お水取りなど)を仕入れ疲れて帰宅した私を半ば強引に連れ出したのでした。またベランダから若草山の山焼きが見えたのを今でもはっきり憶えています、そんな素晴らしい所に住んでいたのだと30年経った今あらためて思っています。というのもその頃の私は今のような奈良への思い入れは無かったからです。
そんな生活を3年程過ごし家内がお産のため実家に帰っていた折名古屋本社に転勤の辞令がおり奈良に帰ってくること無く名古屋へ引越す事となった家内はさぞ困惑した事でしょう、家捜しから、引越し段取り、作業、銀行口座切り替えなど私も大変でした。
結婚30年という節目を2010年に迎えた私たちは、記念旅行をしようと言う事で意見が一致、普通だったら海外旅行とか、ちょっと贅沢な温泉旅行がいいかな と思う所ですが、家内は私たちの出発点(原点)奈良へ是非行きたいと譲りませんでした。丁度遷都1300年と重なっていたため奈良は結構な賑わいを見せていました。
その記念旅行で奈良にはまってしまったのは住んでいた時には全くと言っていいほど関心が無かった私の方でした、それからの私たち は何かと奈良へ足を運ぶようになり年に5~6度奈良旅をするようになってしまいました。歴史にも興味を持つようになり奈良に関する書物もよく読みます、奈良の歴史は日本の歴史だと思っています。仏教徒でありながら殆ど興味が無かった私ですが仏教伝来の空気を味わおうと明日香へ行ったり日本の歴史を根本から変えたと思われる大化の改新に想いをはせたり藤原家の足跡を辿ったり興味は尽きることがありません。それと個人的には平城宮跡が大好きです、と言うのは新婚当時お弁当を持って家内と二人でバトミントンなどよく遊んだ思い出があるからです、今ではあの当時とすっかり変わってしまっていますがだだっ広い所だけは変わっていません
いまでは、行き着けの飲み屋さん、喫茶店、常宿、そして奈良で知り合ったご夫婦、お気に入りの鹿。
奈良へ行っても寂しい想いはしません。むしろ名古屋より奈良の方が心落ち着くかも知れません。
人生の楽園(定年後第二の人生)というテレビ番組がありますがもし夢が叶うならば、もう一度奈良の住人になりたいと思っています、出来れば散歩の範囲内に奈良公園があれば幸せです、そして一年を通じていろいろな行事を見て行きたいと思っています。そして今度は“奈良の住人”というエッセイを書きたいと思います。

愛知県在住 U.M.様 男性