2014年2月22日土曜日

奈良の旅人エッセイ-22-「大仏への道」

「大仏への道」

名古屋駅発6:32分 亀山行
名古屋から奈良に行くルートは幾通りもありますが、関西本線で行く各駅停車の旅は、奈良の大仏さんのありがたさをひしひしと感じることができるルートではないでしょうか。冬の青春18切符の旅、名古屋駅のホームは日の出前、大仏への道はここから始まります。
亀山駅で加茂行の2両編成のディーゼルに乗り換え、山を越え、トンネルを抜けるうちに、時代をタイムスリップ、朝もやの中、静かに次の京をめざす聖武天皇の 遷都行列がぼんやりと見えてきます。743年、聖武天皇は紫香楽宮で大仏造立の詔を発布。大仏さんは紫香楽宮の近くにある甲賀寺で造立が始まりますが、火事が相次ぎ、奈良東大寺へ移ることになります。なんとしても大仏を完成させなければ、この国の民を救うことはできない、加茂駅で大阪行に乗り換えるときには、もう聖武天皇になりきっています。
9:59分、奈良駅着
三条通を歩いて近鉄奈良駅前の行基広場へ。行基さんに「大仏のこと頼んだぞ」と声をかけ、東大寺をめざします。やっと会えました。752年、大仏開眼供養が行われます。大仏殿で見上げる大仏さん、感無量です。大仏への道はたったの3時間半ですが、聖武天皇の苦難の道のりをしばしともにしたおかげで、大仏を前にすると、なぜこんなに大きな仏像を造らなければならなかったのかという理由がちょっとだけ見えてきたりします。奈良の大仏さんは、奈良に入る前、遷都ふらふら行列からアプローチするとまた違った大仏さんが楽しめると思います。

愛知県在住 Y.S.様 50代 女性