2014年2月18日火曜日

奈良の旅人エッセイ-18-「山里の四季、息づく伝統文化」

「山里の四季、息づく伝統文化」

 室生国際交流村の一員として、外国の大学生や高校生をホストファミリーとして 受け入れて6年になる。ノールウエー、オランダ、スペイン、アフガニスタン、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、ラオス、中国、台湾、カナダ などヨーロッパからアジア、アメリカ大陸まで民族・宗教・政治体制・言語とも多岐にわたる。また、滞在期間も1週間以上の長いものから、たった1泊というものもある。
 せっかく外国から来たのだから、奈良のよさ・滞在する楽しさ・旅する楽しさをどう伝えるか、ホームスティした学生たちと過ごしたなかから考えてみる。
 アフガニスタンの大学生が泊まった時のこと、朝起きて外の景色を見た第一声が、「美しい。」であった。「何が美しいの?」とたずねると、「田んぼと山と家のバランスがいい」という。奈良田原の山道を車で走っていると、盛んに景色をカメラに収めている。茶畑が気に入ったらしい。平城宮跡で大極殿を見学した時 も、その裏にある池が美しいという。私にとっては見慣れたありふれた景色なのに、感嘆の声を上げるのには戸惑ってしまった。
 スペインとオランダの大学生は地元の伝統文化に興味を持っていたので、吉野町国栖で宇陀紙の紙漉きを、宇陀市下笠間では、江戸時代から続く紺屋で藍染体験をした。いずれも伝統工芸士の手ほどきでお気に入りの作品ができ大喜びで、藍染のハンカチを首に巻きご満悦であった。
 タイから来た女学生は、大型ショッピングセンターに行くと、日本の化粧品が肌に合うとかで自分のものだけでなく大学の教授のお土産用に大量に買い込むのには驚いた。また、真っ黒な法被を買って店内を闊歩し、人目を引くのを楽しんでいた。
 カナダの大学生とは、地元にある常設の大衆演劇場で、旅回り一座の芝居を鑑賞した。言葉はわからないのだが、歌あり、踊りあり、立ち回りありとその雰囲気を楽しんでいた。ベリーダンスが得意な彼女にとっては、言葉の壁は気にならなかったのだろう。
 ガイドブックにある名所旧跡や観光地もよいが、日本人にとってはありふれた山里の四季の風景や奈良の風土に根差した伝統文化、日常の暮らしに触れることも、外国人にとっては旅する楽しみなのだとつくづく思う。

奈良県在住 M.M.様 70代 男性